「手仕事」手指を使ってものをつくることです。
手を動かし、段取りを考えながら仕事をします。そして、他者へ愛情を込め丁寧につくります。
他者観という言葉があります。
簡単に言うと、他者のことを思うことなのですが、本来、美術、工芸、芸術における倫理観とも言えます。
制作の規模、価値に関わらず、製作者は自分以外の誰かのことを思いながらつくります。鑑賞者は、作品を目の前に、
作者がどのようなことを考えて制作したのだろう?と思い、あるいは、作品を見て心動かされ、遠く離れた友人のことを思い出すかもしれません。
機能性、利便性を追求する工業製品は、使い勝手が良く、効率的で、ある意味完璧です。もちろんつくり手は、消費者のことを考えて設計し、制作していると思います。しかし、工業製品を使う側は、製品が完璧であるがゆえに、つくり手の気持ちを汲み取るきっかけを得られずいるのではないでしょうか。
反面、地道な手技によって、素朴で身近な素材を使ってゼロから立ち上げる「手仕事」は、時間をかけてじっくり作ることで作者の思いが増します。使う側は、手技の痕跡が見えることで、作者の気持ちを想像してしまいます。さらに、それを使ったり、身につけることで愛情が伝わります。
衣食住に必要な道具、衣服、家具、建物などは、古代まで遡れるプリミティブなものです。これは、自分が生きるためだけではなく、家族を生かすために、生活を維持するために必要な物であり、技術、手仕事として、脈々と受け継がれてきました。
ですから、すべてのもの作り、手仕事は、他者への愛情と倫理観とともに或るはずだと考えます。
画像について:5歳の娘のために、妻が毎夜コツコツとつくりました。寒い冬用のルームシューズと暑い夏用の帽子です。