デッサンから学びへ

 生徒さんから、よく物の見方が変わった。気づきや発見がある。というご感想をいただきます。

デッサンという鉛筆一本で描くアナログ作業から、学びの実感を得ていただけたのだと感じ、とても嬉しく思っています。

 私はデッサンや絵画全般における基礎力の中で、一番根本的で重要なことは「観察力と発見」だと考えます。

どんなジャンルでもそうですが、理解した、わかったと感じる時は、発見と意識(認識)が繋がっている時ではないでしょうか。デッサンを学んでる時も、観察して根気よく描くことで、これと同じような実感や気づきがあるのです。

 

 また、「デッサン」「観察」は、対象との対話とも言えます。対話から相手を知り、さらにそれを描くことで、それまで気づかなかった新しい発見が生まれます。

観察という対話によって、相手を再認識すると同時に「なるほど!理解した、わかった、描けるぞ」という実感が生まれるのです。

相手を認め、さらに自ら得た実感も認めることができる。認め合いの上にあって初めて新しい考えやアイデアが生まれるのだと考えます。

 

 極めて原始的で、アナログなデッサンという行為から生まれる学びは、「観察、対話、発見、再認識(認め合い)」という循環の元に成り立ちます。

描くという技術的発展のみならず、対象の観察や対話から得た精神的な学びが、発見や新しい見方、考え方を生み、最後には自分へ還ってくるわけです。

このような精神的な循環や学びから得られる倫理観は、教育ができて初めて成り立つのです。芸術教育もまた、その手助けとなる大切なものの一つだと考えます。