講師作品の油彩行程を元に、デッサンと油彩のつながりについて指導説明させて頂きました。生徒さんは某美術系大学の学生さんです。
なぜデッサンを予めやるのか?カラーの世界をわざわざ白黒で描くのはなぜか?
私達が視覚に頼った日常生活を送っているからこそ抱く疑問なのでしょう。
光があるおかげで物が見えます。明るい部分暗い部分があるから全ての物が立体的に見えます。形、色、明暗など視界に入った情報全てを光が眼に届けます。
本来形がなく触ることもできない光によって眼に届いたある意味曖昧な情報の全てを一気に描き写すのは簡単ではないのです。
ですから、まずは明暗、陰影のみに絞って捉えましょう。
良く観察しながらも時々眼を細め、少し視界をぼかした状態で観ます。
すると明暗の関係が明確になります。これを頼りにデッサンし、明暗とのバランスをはかりながら少しずつ色を加えていきます。すると色にも当然明るいと暗いの関係があるのが分かります。
眼を細めて描く。ここまでは、やってみると問題なく色と明暗の関係が飲み込めると思います。さらに、立体把握、構造把握が絡んでくると複雑になります。
模写は写真資料等の印刷物など既に出来上がった色や形を平面から平面に精巧にそのまま写す作業ですが、デッサンから立ち上げる絵画制作は、まさにゼロからものをつくる作業です。
立体物としての実体を「観る力」のみで平面上に再現します。その分構造的な部分での発見や気づきが多くなります。
ですからデッサン力が上がると、写真模写を含めた絵画制作のクオリティが上がります。
構造に対する立体的な把握がしっかり出来てくるからです。そこに明暗、色、質感のすべてが繋がっていくのです。
以上授業内容を大雑把にまとめましたが、実際は、生徒さんの作品への添削と講師作品の作業工程資料を参考にしながらさらに詳しく説明しています。
デッサン作品に限らず、制作上での素朴な疑問にお応えしながら、生徒さんの発見と学びに力添えができればと思っております。